第4章 息抜き
しかし、
「五条悟とはどういう関係?」
この問いかけにはこれまで素直に答えていた伽那夛も眉をつり上げた。
「なによ、その質問!結局あなたも私のことを悟の付属品か何かみたいに扱うわけ!?」
「まぁまぁ、そんなに怒んなって。そういう意図で質問したんじゃねーから。ちょっと確認したかっただけだから」
「従兄弟よ、ただの従兄弟!……いえ、ただの従兄弟は違うわね、ものすごく迷惑な従兄弟よ!」
「相当嫌ってんなぁ……」
「当然よ!アイツのせいで、私、人生の半分くらい損してるんだから!」
生まれた時から彼と比較され、家ではやれ無下限呪術を引き継げなかった未熟者、悟の陰に隠れるだけの女となじられ、外に出れば誘拐のターゲットになる。
どれもこれも五条悟がいなければ……いや、生まれる年代がもう少しでも離れていればここまで苛まれることもなかったかもしれないのに。
孔は伽那夛のピリピリした空気を払うように軽く手を振る。
「分かった分かった、悪かったよ。質問はここまでで十分、間違いなく本人だ」
五条悟の話題を出すと怒り出す、というのは孔が今回のクライアントである五条家から事前に聞いていた。
この話題で怒りを見せないのならそれは偽者だと念押しまでされた伽那夛の一番の特徴だ。
「……もしかしてあの家から私の本人確認をするように言われたの?」
「まぁそんなとこだ。気を悪くさせてすまなかったな」
「全くね!」
すると、伽那夛の隣でそのやり取りを聞いていた甚爾が意地悪く笑った。
「気をつけろよ?あんまコイツの機嫌損ねると頭カチ割られっから」
「わ、割らないわよ!?」
「そりゃおっかないな」
「だから割らないってば!」
大人2人にからかわれる伽那夛はムキになって否定する。その表情や仕草は年相応のものだった。
「俺は頭割られない内に退散しとくかね」
「もうっ、何とでも言いなさい!」