第4章 息抜き
禪院家といえば、五条家と肩を並べる御三家の一角、由緒ある呪術師の家系である。
メジャーな苗字でもないし、呪具も呪霊も扱っていたことから伽那夛の思い当たった禪院家で間違いない。
そんな家系で全く呪力のない人間がどういう扱いを受けるかなんて考えなくても分かる。
―くだらねぇな―
―何か言ってるくらいで聞き流しとけばいいんだよ―
―ソイツらはオマエのこと同じ人種だと思ってねぇぞ―
……あの言葉は自身の経験に裏付けられた言葉だったのだ。
驚愕して固まった伽那夛を見て孔は軽く肩をすくめた。
「おっと藪蛇だったか?すまんな」
「構わねぇよ」
甚爾にとっては謝罪は不要だった。
今更バレたところでどうということはないし、むしろおとなしくなったので上々。
「……さてと、俺は孔 時雨(コン シウ)、今からお嬢さんにいくつか質問する……って、おーい、聞いてるかー?」
未だに甚爾を見上げてフリーズしている伽那夛の顔の前で手を振ると、ハッとして孔に視線を移す。
「お嬢さんの名前は?」
「……もう知ってるんじゃないの?あなた、この仕事の仲介人なんでしょう?」
「念のための確認だよ。実際にお嬢さんと会うのは初めてだしな」
「ふーん……?」
伽那夛からすると、名前からして外国籍、その上殺し屋の仕事仲介人である孔はかなり胡散臭い。
ただ、明らかに甚爾のことを知っていたし、甚爾の方も普通にしているところを見ると、彼が仲介人というのは間違いなさそうだった。
「……五条伽那夛よ」
先にあちらが名乗っていることも手伝って素直に答え、その後も年齢や好きな食べ物といった当たり障りのないことを尋ねられる。