第4章 息抜き
そうこうしている内に全頭見せ終わり、パドックからは馬が消え、客も屋内に戻っていく。
レースまでまだ少し時間がある。
その間何をやるのかと思ったら、客の向かった先には券売機だ。
いわゆる馬券を買うのだろう。
こういう賭博は胴元が儲けられるシステムになっている。
そうでないと成り立たないのだから当たり前といえば当たり前なのだが、負けることが分かっているのになぜ賭け事をするのか、伽那夛にはギャンブルに嵌まる心理が理解できない。
暇つぶしに何をしようかと踵を返しかけたら……
「ちょ、あなたまで馬券買うの?」
「何言ってんだ、じゃなきゃここに来た意味がない」
さも当然のように券売機の方に歩いていく甚爾に伽那夛は戸惑う。
「仕事中に何してるのよ」
「気分転換だっつったろ。どうせ仲介人が来るまで暇だしな」
「あなた、もしかしてこのために待ち合わせ場所を競馬場にしたの!?」
「気づくのが遅ぇよ」
「なっ……!」
てっきり落ち込んでいた自分のために連れてきてくれたのかと思っていただけに伽那夛は二の句が告げなかった。