第4章 息抜き
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そうして到着した先で待っていたのは、高らかなファンファーレと共にスタートを切る十数頭の馬達。
もちろん伽那夛の想像していた場所とは全く異なっていた。
「競馬じゃない!!」
確かに馬ではあるけれど、気分転換に賭博というのはどういう了見なのか、
理解が追いつかない伽那夛をよそに甚爾はレースを眺めている。
客席に目を移すと、競走馬の情報ばかり載っている新聞にいろいろ印をつけているいかにもといった風情の初老の男性もいれば、若い女性もいる。
見える範囲では男性客の方が多いが、意外にも子連れが多い。
伽那夛が周りをキョロキョロと見ているとレースが終わったようで、モニターにレース結果が大きく表示された。
ガッツポーズをする者、肩を落とす者、
反応の仕方で勝ったかどうかが丸分かりだ。
「人間観察の方が楽しいか?」
「ひゃあっ!?」
背後から突然声をかけられ、驚く伽那夛が振り向くといつの間にか背後に甚爾が立っていた。
相変わらず気配を消すのが上手い……というか呪力がないから気配を感知できない。
あの洋館で最初に会った時もまるで気配がなかったし、隣で会話していても会話が途切れてしまえばいなくなったのかと間違うレベルだ。
憮然とした顔になる伽那夛に甚爾が軽く今後のことを説明する。
「仲介人が来るまで少し時間がある。それまでは自由時間で構わないが、勝手に外に出るなよ?」
「……こんな場所で仲介人に会うの?」
「ここなら誰も俺達のことを気に留めねぇからな。もしオマエを狙ってる奴がいたらすぐ分かるし」
「成程、確かに皆レースに夢中だものね」
カモフラージュには最適、レースそっちのけでこちらを窺う人間がいれば、即座に怪しいと判断できる訳だ。
ただ、いきなり自由時間と言われても伽那夛には競馬場で暇を潰す方法が分からないので、どこかへ歩き出した甚爾についていく。