第3章 冷たい激昂
車から飛び出した後の伽那夛は早かった。
助手席側のドアの前にいた2人を蹴散らし、3人目も顔面に膝蹴りを食らわせて気絶させる。
最初に蹴散らされた男が呻き声を上げながら起き上がろうとすると、すかさず頭を踏みつけ、男は情けない悲鳴を上げた。
「あのガキ……!」
伽那夛の大立ち回りに男達はついていけず、一方的にやられている。
甚爾はその様子を眺めるだけ。
怪我をしそうなことになれば手を貸すが、それも必要なさそうだ。
あれでもまだ伽那夛は手加減しているはずだから。
伽那夛が次々と男達を蹴散らすのを眺めながら、洋館での出来事を思い出す。
あの洋館で甚爾が見た絵画の残骸、伽那夛が1人で壊した呪骸は潰されているものもあったが、明らかに切り裂かれているものもあった。
ただ呪力を込めただけの蹴りではあんな風には壊せない。
そしてあの時、彼女の靴はスケート靴のような形状になっていた。
あれを武器として使ったのか、あるいは術式なのか、
いずれにせよ、この場ではまだそれを見せていないから、使うまでもないということなのだろう。
「オイオイ、女のガキ1人に何手こずってんだ!」
劣勢を見て運転手まで駆り出され、1対7になるが、その内3人は負傷、2人は倒れて伸びている。
「何人増えようが変わらないわ!そこの男と同じように伸してやる!」
まずは負傷している者から潰そうと伽那夛が走り出す。
すると、白ワゴン車の運転手が屈んで地面に手を当てた。
「流化操術」
地面に呪力が走ったと思ったら、伽那夛の足がズブリと沈んだ。