第3章 冷たい激昂
そうして行き着いたのは無人の廃工場。
取り壊しを待つばかりの建物だろう。
入口のシャッターは閉じられ、駐車場にもあちこち雑草が生えており、伽那夛が多少派手に暴れても問題なさそうだ。
後を追ってきた車2台もすぐ敷地内に入ってくる。
甚爾はその様子を観察しながら伽那夛に一言指示を出した。
「シートベルト外しとけよ」
「うん」
追手の車はこちらの車の前後を挟む形で止まり、それぞれの運転手を残して5人の男が降りてくる。
そして運転席側と助手席側のドアの前に立つと、金髪の男が運転席の窓を軽く叩いてきた。
それに従って窓を開けてやる。
「オレら、そっちの子に用があんだよね。その子だけ置いてってくれない?そしたらアンタに危害は加えない」
さて、どう答えたものか。
あまり逆撫でするようなことを言えば、こっちにも火の粉が飛んできて面倒、かといって言いなりになる気も全くない。
甚爾が言葉を選んでいると、
「あなた達、私をつけ狙うからには覚悟できてるんでしょうね!!」
隣から鈍い打撃音と一緒にぎゃあという男の悲鳴、そして車のドアを勢いよく閉める音が聞こえてきた。
振り向かなくても何が起こったかは明白だ。
あの猪娘め、と大きくため息をつく。
そして窓を叩いた金髪男を不敵に睨んだ。
「それは聞けねぇな、こっちも仕事なんだ」