第2章 人生初の……
「あなた、なんて名前なの?」
「あ?」
「名前、教えてよ!私だけ知らないのは不公平じゃない?」
車に乗り込もうとしたところで伽那夛から尋ねられる。
「別に名乗る程の名前はねぇよ」
「なっ……!」
ここで禪院と答えると後々面倒事が起こりかねないし、何よりその姓を名乗りたくないという主観もある。
だが伽那夛にとってはそんな事情は関係なかった。
「名前くらいあるでしょ!?それに知らないといざという時に困る可能性だってあるし」
「しつこいな」
「……名無しの権兵衛って呼ぶわよ」
「チッ……甚爾だ」
不服ではあったが、ボソッと呟かれた不名誉なあだ名で呼ばれるのは御免被る。
姓まで聞かれたら適当に脅そうと決めて助手席に座る伽那夛を横目で見ると、目を丸くしてこちらを見ていた。
「すんなり教えてくれるなんてちょっと意外かも。『俺の名前を知ったら命はない』くらいは言われるかと思ってた」
「そしたらオマエ、変なあだ名で呼ぶだろ」
「まぁね」