第2章 人生初の……
電話を切った甚爾が伽那夛にも同じことを伝えようと振り向くと、表情を曇らせた彼女と目が合った。
電話でのやり取りからある程度内容を察したようだ。
「交渉成立だとよ。これで家に帰るまで首は繋がったな。……不服か?」
「……どうせ帰っても、待ってるのは嫌味と叱責だけ。私のことなんて皆どうでもいいと思ってるわ」
「どうでもよかったら、オマエに2000万も出さねぇと思うが?」
「それは私のことを心配してるんじゃなくて、利用価値があると見積もられてるだけよ」
五条の血筋の娘、結婚のカードとしては利用できる。
時代錯誤も甚だしいが、本当にそういったものなのだ。
「呪術家系の女ってそういうものよ」
伽那夛はこれまで十数年の生活の中で嫌というほどそれを学んだ。
今更心配してほしいなどとは思わないし、帰った後のことを考えるとうんざりする。
まぁ、そんな事情は目の前の殺し屋には関係ないか。
「それでも私はまだマシな方。お嫁に来た人とか、術式持ってない人は召使いみたいにこき使われるんだから」