第2章 人生初の……
食べ終わる頃にはすっかり麺が伸びてしまっていたが、伽那夛は文句を言うことなく完食し、律儀にご馳走様でしたと手を合わせた。
「うーん、ちょっと塩辛かったけど、まあまあ美味しかったんじゃない?」
人生初のラーメンの感想を大真面目に述べる伽那夛を尻目に甚爾の携帯電話に着信が入る。
孔からだ。
思った以上に早く五条家と接触できたらしい。
「話はついたか?」
『ああ。あちらさん、えらいこと聞き分けが良かったぜ。あらかた向こうでも五条伽那夛が行方不明って騒ぎになってたんじゃねぇか』
「いくらで決着した?」
『こっちの提示通りの2000』
「マジか。条件は?」
ここまで思惑通りにいくとは予想外だったため、甚爾も驚いたが、同時に何か裏があるだろうと想像がついた。
『傷モノにしないこと、だとさ』
「キレイなままで返せってか。そんな条件なくてもガキに手は出さねぇよ」
『怪我させんなって意味もあんだろ』
「あー……確かにそっちは面倒そうだ」
というか、この交渉を持ちかける前、洋館を出る際に鼻を強打しているから既に怪我をしていると言っても間違いではない。
それを理由にゴネられると面倒だ。
『いつもの仕事と真逆だしな。やらなきゃよかったか?』
「まさか。殺しの方が何倍も楽なのは確かだが、五条家にいらん疑いかけられて探られるよりは恩売っといた方が断然いい」
『それもそうか』
他にも3日以内に五条家の指定する場所に連れて来いという条件もあるらしい。
ただその場所もここから車で3時間弱程度。
どんなに余裕を持って見積もっても明日には到着できる。