第2章 人生初の……
結局何回やり直しても失敗する伽那夛。
手元には無残な姿に割られた箸が5膳ほど転がっている。
「ちょ、全然綺麗に割れないじゃない!」
「こら、あんま遊ぶな。俺が睨まれんだろうが」
「遊んでない、真剣よ!」
最初はからかうように見ていた甚爾もさすがにこれ以上は店側から顰蹙を買いかねないのでまずいと伽那夛の手から割り箸を取り上げ、縦に割ってほらよと渡してやる。
「……あ、ありがと」
「別に。あまりにも不器用だから見てられなかっただけだよ」
余計な一言を、と苛立ったが、割り箸のことは事実以外の何者でもないので言い返せなかった。
やっと使える形状の箸を手にしたものの、伽那夛はまだラーメンに口をつけず、今度は割った面を何度も摘んでいる。
「……何してんの?」
「木のささくれを取ってるの。放っておいたら手に刺さって危ないじゃない」
「早く食わねぇと麺が伸びんぞ」
あれだけ割り箸と格闘していたのだ。既に伽那夛の麺は体積を増していた。
本人もそれに気づいて慌てて食べ始め……と思ったら、この場には到底似合わぬ上品な所作で麺を口に運び始める。
「……オマエ、マジでお嬢サマだな」
「ふ、普通はこうやって食べるでしょ!?」
「周り見てみろ。んな食い方してる奴いねぇよ」
甚爾の言う通り、他の客はもっと豪快に麺を啜って食べている。
だが体に染みついている食べ方をすぐに変えることはできない。
「い、いいじゃない!食べ方は人それぞれでしょ」
「ま、別にケチつける気はねぇけどよ」