第1章 喧嘩別れ
悠side
バリケードを貼り、何とか入口を塞ぐことが出来た。
夜間入口や外からの侵入口は全て塞いだ。
ふと、待合室に設置されているテレビに目が入る。
何か情報が……
そう思いテレビの電源を入れニュースに切り替える。
『速報です。人々が襲われるという奇妙な事件が相次いでいます。』
映像には先程の化け物が次々と襲われ倒れる映像が流れている。
俺たちの住んでいる町だけじゃないようだ。
日本各地で起きている。
「零音……」
俺は急いで零音の携帯に電話をかけた。
きっと大丈夫だ。
無事に生きて……
『おかけになった電話番号は電波の届かない所にいるか、電源が___』
「っ!!!」
出ない……
そんな……
何度も電話をかけるがかかる気配がない。
零音の死を悟った俺は周りの音が聞こえなくなっていた。
そんな……今朝まで普通に話して……
喧嘩してしまった。
そうだ、まだ直接謝れてない……
『もし襲われかけたら脳を狙ってください。あいつらの弱点は脳です。それから、もし噛まれた方、もしくは引っ掻かれた傷などがある場合、化け物化してしまう可能性があります。その時は即隔離、もしくは脳を狙って仕留めてください。』
どこかの専門家かわからない男がテレビの中でそう話していた。
噛まれた方……それって死体も……
そう思った時、先程亡くなったはずの患者が起き上がった。
「うぅ…」
「っ!!その患者から離れろ!!!」
俺は咄嗟に近くにいた人に叫んだ。
だが、間に合わなかった。
一瞬で襲われてしまい、倒れてしまった。
「っ!!!!」
このままじゃ他の人も……そう思った俺は近くにあった消化器を持って頭を殴った。
これはもう人間じゃない。
既に死んだ人だ。
仕方がないんだ……
そう自分に言い聞かせた。
他に噛まれた死体……かなりの数がある……
急いで処理しないと……
俺は生きている人を少しでも多く助けるために指示を出した。
そして、病院の中にもバリケードを貼り安全な場所を作った。
その間にも何人か襲われてしまったが、救える命は救えた。
ただ、そこに零音の姿はない。
それだけが心残りだった。