第2章 トラウマ
零音side
「やぁ、起きたかい?」
洗面所から出てきた男性の手には濡れたタオルが。
何度かロビーで見かけた人だ。
「廊下を通りかかったら叫び声が聞こえたから……その脚……あの人達かい?」
「あ……えっと……」
この人が処置してくれたのだろうか。
お礼を言わなきゃ……
「……はい……その……ありがとうございます。脚の処置。お医者さんですか?」
「いや、僕は医者じゃないよ。医療の現場では働いていたけどね。ごめんね、勝手に処置しちゃったよ。僕の持ってる限りの知識でしかないけど。」
温もったタオルを僕に渡してくれる。
よく見たら汗だくだ。
体が少し冷えている。
「その脚だと、お風呂には入れないと思うから軽く体を拭くといいよ。」
「……ほんとにありがとうございます。処置完璧ですね……」
僕の脚に巻かれた包帯を撫でて、過去に怪我した時に悠が処置してくれたのを思い出す。
「君こそ医者なのかい?」
「あ、いえ……僕の恋人がそうなんです……自分でできる範囲の処置は教えて貰ってて。」
「そっか……無事だといいね。」
僕の表情を見て察したのか背中を撫でてくれる。
「きっと無事です。」