第2章 トラウマ
零音side
扉の向こうからは冷たい風を感じる。
僅かに血の匂いもする。
行きたくない。
足が震える。
恐る恐る前に進む。
中は暗くてよく見えない。
「……うぅ……」
微かに呻き声が聞こえる。
誰かここに居るのだろうか。
目を懲らすと人影が見える。
体型からして女性のようだ。
「あの……っ!」
声をかけようとしたら須賀原くんから縄を引っ張られ口を塞がれた。
「しー……」
よく見ろとジェスチャーをされる。
「うぅ……あが……」
僕を助けてくれた女子高生だった。
既に人間の姿ではなくなっていた。
やっぱりあの傷は噛まれた跡だったのか。
須賀原くんはここから出ようと僕に言い、部屋の鍵を閉め彼女を閉じ込めた。
何故殺さないのだろうか。
銃は持っているのだからすぐに殺せるはず。
「あの……どうして彼女を……殺さないんですか……」
すると彼は僕の頭に銃口を向け、
「弾が勿体ないだろ……それに、こうやってお前を脅せない。」
楽しそうに笑い僕を脅す。
彼は一体何が目的なのだろう。
何もしてないのにどうして僕だけ……
「ひっ……」
「ぷっはは……ほんとに面白ぇ……」
僕の腰に着いた縄は解いてくれることはなくそのまま須賀原くんの部屋の方へ連れていかれる。
やだ……また……
僕は反抗しようと縄を両手で掴み引っ張る。
「いやっ……お願いします……もう……んぐっ!」
勢いよく縄を引っ張られ腹部を殴られる。
食べたものが全て上がってきそうだ。
激痛が走った後に僕は膝から崩れ落ちてしまった。
「はぁはぁ………うっ……」
「なぁ?死にたいの?」
「っ!死にたくない……です……」
「だったらさ、俺の言うこと聞いとけよ。言うことさえ聞いておけば命助けてやるって言ってんだよ。なんならお前の立場、他の奴らより上にしてやってもいいだよ?」
「っ……ごめんなさい……」
「俺も死なれちゃ困るんだよ……仲良くやろうぜ、零音。」
頭に手を置かれ2回ポンポンと触られる。
いつも悠がしてくれる仕草だ。
悠の暖かい大きな手が恋しい。