【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない
第1章
『お母様が、誰が何と言おうとこの子はわたしの子です!あの人とわたしの、子供なんです!堕ろせだなんて、そんなこと、…ッそんなこと言わないでくださいっ!!』
『だから誰アマスか!?その腹の子の父親は!!』
『言えませんっ!!言えるはずがないわ!言ってしまったらお母様はあの人を殺しに下界へ行ってしまうのでしょう!??』
『当たり前アマス!私の娘を穢し、子供まで残すだなんて!それも相手は下々民!殺さずにどうしろと言うのアマスか!!』
『穢されてなどいません!あの人のことが好きだから、好いてしまったから!わたしが一夜だけでもとッ───!』
バチン!と寝室に、肌をたたく音が響く。
同時に頬に鋭い痛みが走り、手を振りかぶったあとの母の姿を見て、わたしは打たれたのだと気づいた。
人生で、初めて、母に暴力を振るわれた。
驚愕よりも、ショックの方が大きかった。
母に打たれたことではない。どうしてそこまで一般市民を嫌うのかと。どうして、世界の創造主の末裔であるというだけで、マリージョア以外の世界を下界と呼び、人々を下々民と呼ばなければならないのかと。
悔しかった。
…悲しかった。
あんなにも優しい世界の人たちと、どうして平等に接してはいけないの?
こんな籠の中のような、マリージョアという小さな国の中だけで生きていくなんて、そんなの自由とは呼べない。窮屈すぎる。
『っ……お願い、します…産ませてください、この子を…、どうか…!』
天竜人、世界貴族以外の人たちを見下し、世界中の人たちに嫌われているというのに。
それなのに自分たちが神に等しいだなんて、…そんなの、本物の神様に対して失礼にもほどがある。
『許して、ください…ッ、お母様、わたしはあの人のことが、本当に、』
生まれた時から、わたしを抱いて、愛でてくれた…母の優しい手。
人々を奴隷として扱い、その手は気がつけばひどく汚れてしまっていたけれど、落ち込んだ時や寂しい時はいつでもその手に触れさせてくれた。
母の手。天竜人でも、この血が嫌いでも、わたしを産んで愛してくれた母のことだけは、心から……大好きだったの。本当よ。
だから、触れさせて。
どうか、その手でわたしを許してください、お母様───……