第6章 幼少期 第6話
アイside
-とある街の公衆電話-
「ねぇ、子供達も結構おおきくなったんだよ
1度会ってみない??」
何となく別れた男に連絡を取ってみた
「いや、寄りを戻すとか
そういう話じゃなくてさ」
きっかけは子供達の会話を盗み聞きた事
「なるべく考えないように
してる事だけど…
俺達の父親って一体誰なんだろうな
あ…考えただけで心が沈む」
「馬鹿ね、そんなレベルの低い事で
落ち込んでるの??
処女受胎に決まってるでしょ
男なんて最初から存在してない」
なんだが妙な結論に至ってて
これはやばいと思った
「うちの子は凄く賢いし
私達の事情も分かってくれるよ
うん、新しい住所はね…」
仕事は順調
フォロワーも100万人を超えた
世間は私を見てくれている
だけど…
-アイ新住居-
「全く酒がうめぇな!!
ほれ、新居祝いの酒だ!!
飲め飲め!!」
「わー森伊蔵だー」
「駄目ですよ
アイさんが20歳になるのは来週
もうちょっと我慢してください」
「あーそうだったそうだった
アイが主演のドラマも視聴率上々!!
B小町全体の仕事もびっちり埋まって…
いよいよ来週はドームだ!!がははっ!!」
「社長上機嫌だねー」
「社長はね、自分の育てたアイドルを
ドームに連れてくのが夢だったのよ
社長だけじゃなくて社員皆の
夢でもあるけど」
「そんなにドームって凄いの??」
「他の箱とは意味合いが違うのよ
専門の会社挟まないと枠すら
抑えられないし、大人数の観客を
捌けるスタッフの練度や実績
ドームに相応しいアーティストか
厳重な審査がある
長い時間とスタッフの
努力が必要な会場なの
お金があれば出来る場所じゃない
選ばれた1握りの
アーティストだけが上がれる舞台
ドームは皆の夢なのよ」
「へぇー」
私が売れると皆が喜ぶ
だから私も嬉しそうにする
「大事な時期だ
スキャンダルなんて無いように
くれぐれも父親に会おうとかするなよ」
「もちろん」
私は嘘吐き
考えるより先に
その場に沿ったことを言う
自分でも何が本心で
何が嘘なのか分からない
私は昔から何かを愛するのが苦手だ
こんな私は到底アイドルなんて
向いて無いと思ってた