第15章 聡明で腹黒い王子様
カルゴールから出立してから二日後のこと。泉の町と聞いていたけれど、ここはこの国の王都【アクアベル】だった。確かに、王都と言うだけあって美しい町だった。
この町で人に会うと言ったマーフィス。向かった先は、一軒のお屋敷。見上げるほどの立派なお屋敷は、どう見ても高位の貴族のものだろう。
「よく来たね、マーフィス!!」
屋敷の中から現れたのは、金髪碧眼のイケメンだった。どうやら、マーフィスとは気安い間柄らしい。
「久しいな、ディンバー。」
「本当だよ。ずっと遊びに来てって言っていたのに、相変わらずツレナイな。まぁ、それでこそマーフィスなんだろうけど。で、こちらがマーフィスの奥方かい?」
「あぁ、ミアだ。ミア、こいつがこの国の王太子のディンバーだ。ひょんな切っ掛けで知り合ってから、仲良くなった。」
「えっ?王太子?」
「そうだよ。よろしく。」
ひょんな切っ掛けって、どんなものだったのだろう?王太子とここまで気安い間柄になれる内容って・・・。
「留学先でマーフィスと出会ってなければ、あのまま私は生きてこの国に戻れなかっただろうから命の恩人だよ。立ち話はこの辺にして、中で話そう。」
説明されたのは、この屋敷のこと。王妃のご実家と言うことで、マーフィスと会う時に使わせて貰っているらしい。
振舞ってくれた紅茶は美味しい。流石、公爵家というところだろう。そして、合わせて出してくれたのは薄い小麦粉を練って焼き上げたクッキー擬き。仄かに甘く仄かに果物の味がする。
折角なので一枚頂いて、味を確認してから後は手が出なかった。不味くはない。でも、美味しくもない。
「それで、面白い事になっている様だね。」
「相変わらず、耳が早いなディンバーは。」
「腐っても王太子だからね。」
王太子自ら腐っても発言に驚かされる。顔を知らなかったのは、ずっと留学していたから第二王子の婚約者だった私も会うことがなかったのが理由。
「まぁ、キミの元婚約者は腐ってたみたいだけど。それに、国王陛下も頭を抱えているらしいね。」
隣国の王子を腐ってた発言。結構、腹黒い人なのかもしれない。ま、あんな人のことはどうでもいいけど。
「身体の方はどうだ?」
「すっかり良くなったよ。死に掛けたけど、あれがあったからマーフィスと出会えたんだから案外悪い事だけじゃなかったよ。」