第2章 調味料と光る球
だが、しかしだ。
今の私は、半泣き状態だ。そうか、そうだったね。この世界の食事は、簡素的だった。固いパンを薄い味付けのスープに浸して食べる。ケチな父だったので、屋敷で食べる食事も貴族とはいえ普段はこんなものだった。
「ミアは前世の記憶とかで、何か料理は出来るのか?」
「えっ?」
「必死に隠そうとしているけど、口に合わないんだろ?あぁ、責めている訳じゃない。」
私は前世の記憶から、調味料の話しをマーフィスにした。そして、柔らかいパンのことも。
「ミアの話しからすれば、直ぐ出来そうなのが・・・マヨサン?っていう調味料だな。」
「あ、ごめんなさい。マヨサンはニックネームみたいなもので、正式名称はマヨネーズって言うの。」
「マヨネーズ。分かった。取り敢えず、材料見繕うから試してくれないか?」
でも、この世界での香辛料は高価だ。初日から贅沢なことを言ってしまったんじゃないかと気落ちしていると、家の中にある赤い扉を開けたマーフィスを見て、私は感嘆の声を上げた。
「ここは食在庫なの?凄い、色々ある。」
「隣りの緑色のドアを開けたら、畑に繋がってる。」
因みに、この家の中にはこの二つのドアと更に黄色の扉も存在している。この部屋は、色んな機材が設置された部屋となっていた。
「赤と緑の部屋は、誰にでも開けられる部屋じゃないんだ。俺の魔力が鍵になっている。だから、ミアここを触って。ミアにも開けられる様にするから。」
「えっ、そんな大切な場所なのにいいの?」
「いいに決まってるだろ。ミアは俺の嫁なんだし。」
色々とウエルカム状態のマーフィスに、私は嬉しくなって抱き付いてしまった。そう、不可抗力である。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「どうして謝るんだよ。夫婦なんだから気にする事じゃない。」
「そ、そうなの?でも、マーフィスは何か慣れてない?」
「まぁ、こんな顔してるから色々とな。でも、面倒なのは先に駆除した。あ、変な勘繰りはするなよ?これでも、あまりにも女に興味示さないから、男色家の噂も・・・って、これは言うべきじゃなかった。今のは忘れてくれ。」
少し照れ臭そうに笑うマーフィスに、私も笑ってしまう。
「ミアはそうやって笑ってればいい。」
「あ、ありがとう。」
「俺にとっては世界一可愛い嫁だと思ってるんだ。だから、笑ってろ。」