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特級錬金術師の旦那様

第10章 薬草採取と報せ


翌朝、昨晩採取した薬草を畑に植え替えしていたマーフィス。私はそれを一緒になって行った。

「ありがとな、ミア。」
「ううん。でも、今は光ってないのに大丈夫なの?」
「あぁ、問題ない。採取するタイミングがあの時でなければ、等しく枯れるんだ。」

そういうものらしい。今まで先人の行動の結果が、今に至るのだろう。そう言えば、満月の夜でしか作れないものもあると言っていたっけ。そう言った、条件付きのものが他にもあるのだろうな。

「昨日の紙吹雪みたいなのは、マーフィスも使う事が出来るの?」
「あぁ、アレか。俺が使うのは風魔法とコラボしたものだ。目的の相手に風音として報せる。錬金術師によって、それは様々だな。」
「へぇっ、凄いんだねぇ。見て見たいと言うか、聞いてみたいなぁ。」
「それなら、こんなのはどうだ?」

マーフィスが何かの呪文を呟けば、私の周りに風が舞う。そして、マーフィスの声に似た風音がこう聞こえた。

「好きだ。」

目を見開き、マーフィスを見た私。

「い、い、今のは・・・。」
「こんな事くらいで、顔を赤くするなんてミアは可愛いな。でも、俺なら直接口で言うけど。今回は特別。」
「あ、ありがとう。聞かせてくれて。」
「何だよ、そんな赤い顔して礼なんか言われたら・・・付け入りたくなるんだけど。嫌、付け入ってもいいよな。」

咄嗟に掴まれた腕が引き寄せられ、マーフィスの腕の中に私の身体が収まる。

「・・・可愛い。」

呟くようにそんな事を発したマーフィスは、そのまま奪う様唇を重ねて来た。しっかりと抱き込まれた体は、ビクともしない。でも、呼吸が困難になって来た頃、マーフィスの唇が名残惜しそうに離れた。

「もっとミアを味わっていたいのは山々なんだが、そろそろ出立しないとな。」
「お、追い付かれちゃう?どうしよう?」
「相手は馬だからな。今回は絨毯で飛んだ方が距離を稼げるか。」


それから一時間後。

私たちは、さっきまでの不安な気持ちなどどこへやら。ポカポカした日の光の下、順調に国境へと近づいていた。

「マーフィス、相手が王族なら国境に知らせがいっているんじゃないの?」
「かもしれないな。でも、力づくでどうにかしようとされた方がある意味遣りやすいんだがな。」

そんな事を呑気な声で放つマーフィス。

しかし、いざ国境に到着すれば、想像とは少し違っていた。



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