第7章 結婚指輪という武器
「マーフィス、大丈夫だった?」
「あぁ、ギルドに引き渡して来たし問題ない。さ、用事は済んだから行こうか。では、またなアリオン、ヨキア。」
ギルドを出ると、私はマーフィスに言った。
「仲のいい夫婦なんだね。」
「あぁ、そうだな。アリオンが口説きまくってヨキアを射止めたんだ。ずっと大事にしてる。確か・・・子供がこの前生まれたって聞いた気がする。」
「いいね、幸せそうで。」
「そうだな。周りからは随分色々言われてたけど、アリオンはずっとヨキア一筋なんだ。随分年上だって驚いただろ?」
「でも、二人がいいならいいじゃない。」
「俺もそう思う。アリオンの十五上だって聞いたけど、そんなのどうでもいいもんな。」
十五年下の旦那様か・・・。ま、仲がいいなら何も問題ないよね。
「ところで・・・この指輪、他に何かあるのかな?」
「それはその時のお楽しみだ。」
どうやら、教えてくれるつもりはないらしい。まぁ、いいか。私に危険がある訳じゃないし。
マーフィスが契約した空き地は、この町の郊外だった。絨毯で向かえば、目的の空き地に一人のマントを羽織った男性がいた。
マーフィスに気付くなり、近付いて来た。見た目は少し神経質そうに見える人だ。だが、開口一番のセリフがこうだった。
「マーフィス、結婚したって聞いたぞ。前々から言ってただろ。嫁はいいもんだってな。」
この人も愛妻家?
しかし、そうではなかった。どこからともなく現れた女性は、男性を叱り付け首根っこを掴んでは連れて行ってしまった。
「ミア、あれが恐妻家の見本だ。」
「うん、よく分かるお手本だね。」
「あの人、あれでも嫁が大好きなんだ。面白いよな。」
世の中には色んな人がいる。お互いの利害が一致しているのならいい。
「今日は疲れたな。ミアの手料理が食べたい。頼んでいいか?」
「いいよ。何かリクエストある?」
「オムライスってのがいい。」
「分かった。大盛りにするね。」
「やったっ!!」
ウチも大概、平和で仲はいいと思う。さて、マーフィスの為に腕を奮いましょう。