第5章 冒険者と住人
あのローブを来た胡散臭い人は、この町の娼館のオーナーだった。あんな身形をしていても、そこそこ腕利きのオーナーらしい。
そして、その後のマーフィスはというと・・・どういう訳か、私に執着している。最初は羞恥で打ち震える私だったのだけど、うん、慣れた。だって・・・。
マーフィスが異性を気に入ったのは、私が初めてだったらしい。一度、私の気持ちがどうにもならなくなって何とかして欲しいと憤慨したら・・・逆切れされた。
初めて他人を気に入ったんだから、距離感とかそんなの分からないし私の傍にいたいんだから仕方ないだろなんて。開いた口が塞がらなかった。
じゃあ、どうやって気持ちに折り合いつければいいか教えてくれなんて言われて私は白旗を上げた。そもそも、それが分かるなら私がそのやり方を使ってた。
ソファーに座り寄り掛かると、ソファーの柔らかさではなくマーフィスのボディを感じる。あの胡散臭い人が私を求めた事の弊害だと思っている。全く、余計なことをしてくれたものだ。
そして、マーフィスよ。スキンシップが加速していませんか?第一、貴方のその黄金色の瞳に見詰められたら、振り上げ様とした腕が上がらなくなるのですが?
相談する人もいないし、どうしたものか。いっそ、一思いに抱かれてみればマーフィスは落ち着くのだろうか。なんて、私の思考も既におかしくなっている。
「マーフィス、仕事はいいの?」
「仕事?あぁ、そうだったな。」
どうやら、何かを思い出したらしい。
「冒険者ギルドに行く。ミアも用意してくれ。」
初日以外で、初の町散策だ。この数日、引き籠っていたから嬉しい。でも・・・外へと出た時、そう・・・無意識に掴んだマーフィスの手。慌てて離そうとしたのだけど、それは叶わなかった。だって、しっかり指を絡めて握り締められたから。
久しぶりに舞い戻って来た私の羞恥。全力で今、お出迎えをしている最中だ。つまり、私の顔は赤い。心拍数も爆上がり中だ。
「マーフィス、今日の用事って何なの?」
「あぁ、言ってなかったな。鉱石の売上金を貰いに行く。この前は納めるだけだったから。」
「この前って?」
「採掘に行った日。かなりいいのが手にはいったから、ギルドが色付けてくれるって言ってたからな。」
「そうなんだ。マーフィスって、本当に凄い人なんだね。」