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特級錬金術師の旦那様

第4章 歓迎されない来客


「また、物が増えてる。下着まで用意してくれてるけど、これもマーフィスが作ってくれてるんだよね。私の身体、私より知ってそう。それにしても、可愛いワンピース。毎日、選ぶのを迷うのよね。でも、今はコレ。」

新たに作って貰ったのはエプロンだ。フリルの付いた、新妻らしい可愛いエプロン。マーフィスの私のイメージって、これって事だよね?でも、可愛いから使わせて貰う。

鼻歌交りで私が向かったのはキッチンだ。酵母を上手く作れたから、今世で初のパン作りだ。発酵もマーフィスの機材で時間短縮可能だから本当にありがたい。

さて、生地を捏ねる。只管、捏ねる。そう言えば、嫌なこと思い出したらいいとか聞いたことがある。

「あのバカ王子もヒロインだって、私をコケにしてくれた分、天罰が下ればいいのよ。」

家の中では、激しく生地を捏ねる音が響いた。

「ふうっ、いい運動になった。この生地を機材に入れてスイッチオン。ん?誰かの声?」

玄関先へと向かうと、外から野太い声が聞こえる。怒鳴り声の様に聞こえるが、応対しなくていいと聞いている。約束したし、何か怖いからそっとしておこう。

あ、何か風の音?・・・何だろう?

興味本位で小さな窓から覗いて見れば、植物の蔓に簀巻きにされた厳つい男性が振り回されていた。あの葉っぱの形状からして、この家に絡まっている植物?

この世界には魔物もいるし、元の世界には存在しないものがたくさんある。ってことは、この世界の植物は意思を持ってこの状況を・・・?

うん、私には理解出来そうにない案件だ。考えるのは放棄だ。多分、この家の守り神的な存在だと思っていればいいのかも?

「あの人、大丈夫かなぁ・・・あ、何処かに飛んで行った。良かった、お帰り頂けた様で。さ、続きをしよう。」

機材から二次発酵させた生地を取り出し、ホクホク顔でパン作りだ。型は貰ったから一つは食パン。後は、木苺のジャムと胡桃を混ぜ込んだ一般的なあんぱんサイズに整える。

後は、オーブンで焼くだけ。楽しみだなぁ。あれ?また、人の声が聞こえる。今度は女の人?

またしても、小さな窓から外を覗く。外からは、超音波みたいな声でマーフィスの名前を連呼している女性がいた。一体、この人とマーフィスはどんな関係なのだろう。

ひょっとして・・・現地妻?嫌、あり得ないか。つい、取り乱しそうになった。


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