第21章 その後の私たち
あの迷惑な隣人は、突然いなくなった私たちに驚いたらしい。マーフィスに色目を使い言い寄っていた女の子は、思ったよりマーフィスに執着していた。
そう・・・新宅を探し当て、訪ねて来たのだ。偶然を装って。一つだけ誤算だったのは・・・この家が、マーフィスが作ったものだったこと。
つまり、あの蔦がある。ただ一つだけ・・・そう、子供たちは丁度お昼寝の時間。そして、私たちは昼間から乳繰り合っていた。庭先から家の中を覗く女の子は、一階のリビングでのその情事を目の当たりにした。
そして、一瞬だけ・・・そう、一瞬だけだったが、マーフィスと目が合った。射殺しそうなその視線に、女の子の呼吸は止まり、咄嗟に身を隠した。
その後、町中で私たちを見掛ける女の子だったが、マーフィスの優し気な眼差しはいつも嫁のミアにだけ向けられていた事に気付いた。
「貴女が、マーフィスのストーカーですか。」
「えっ?あ、貴方は・・・。」
「おや、私の事をご存知とは光栄ですね。以前、お見掛けした時は物欲しそうなお顔をされておいででしたが・・・ひょっとして、欲求不満ですか?」
「なっ!?し、失礼な人ですね。」
「何なら、私が慰めて差し上げましょうか?」
「えっ?」
それは人のいい笑みを浮かべ、貴公子っぷりを表わしたサーファスの姿があった。
「女性を(女性だけではなく)悦ばせるのは・・・ねぇ?」
色気の籠った眼差しを向ければ、女の子はサーファスに手を引かれある建物の一室に入った。
「えっ、ここは・・・。」
「前世で言う警察です。貴女に被害届が出ておりますので、こちらへお連れしたと言う訳です。」
「私を騙したんですね!!」
「おや、お気に召しませんでしたか?」
「帰ります。」
「帰れませんよ。今から、取り調べを受けるのですから。」
「だったら、私を騙した貴方だって罰せられるべきでしょう?」
「証拠でもありますか?」
女の子はぐぅの音も出なかった。現れた取り調べの人に引き渡され、その後、接近禁止命令が出た。
「お世話になりました、サーファスさん。」
「構いません。それで、ミアは落ち着きましたか?」
「はい、お蔭様で。」
「本当は自分の手でどうにかしたかったでしょうに。」
「そうですね。でも・・・ミアの傍にいたかったんでサーファスさんにお願いしました。」