第21章 その後の私たち
「えっ?今、何って・・・。」
「だから、俺に取り成せとディンバーに連絡があったそうだ。」
「どうして?」
「俺が欲しいんだろ。何度かディンバーの所の王城で招かれていた隣国の王族なんだが、纏わりつく様な視線を向けられていたんだよ。」
「その王族って、王女なの?」
「いいや?王子だ。」
・・・王子?えっ、王子なの?
「それに、所々で俺たちの行動を監視していた。ただの監視だったから、何もしなかったがな。」
「じゃあ、マーフィスの行動は筒抜けってこと?」
「だろうな。昔、部屋を間違えたと言って、俺が滞在していた王宮の来賓室に忍び込まれた時があったしな。」
マーフィスを狙っていたのは、女性だけじゃなかった。まさか、一国の王子から性の対象として望まれていたなんて。マーフィスって、綺麗だものね。
「その王子って、どういう人?」
「えっ、興味ないから知らない。ただ、見た目はゴリラ。」
私はポカン。
「あの時も、一回だけでいいからなんて言い寄って来たし。ゴリラに言い寄られても、俺にも選ぶ権利はあるって。力ずくで押し倒された時は、殺そうと思った。」
「えっ、マーフィス・・・まさか。」
「一撃お見舞いして、暫くは使い物にならなくした。」
「どういうこと?」
「男のシンボルに雷魔法をちょっとな。蛙が引っ繰り返った様な声を上げて泡吹いて倒れた。だから、ついでに足でも・・・あ、それはいいや。」
マーフィス、容赦ない。
「ねぇ・・・まだ、狙われているってこと?」
「みたいだな。」
みたいだなって、そんな呑気な・・・。
「この土地はどの国にも所属していないんだ。その内、襲って来るかもしれないな。」
「そんな・・・それって、戦争ってことでしょ?」
「何も心配ないって。元の世界の近代武器とこの世界の武器が存在する町だぞ?剣術にしても魔法にしても、それを扱うのは人間だ。つまり体力も魔力も限りがあるだろう?でも、ここには兵器が存在する。」
「へ、兵器?銃とかってこと?」
「そうだ。それに・・・この町は、この世界の魔法でも防御はされている。師匠の町を見ただろう?」
私はこの町で住民登録した時に渡された、勾玉に触れた。
「ま、ここも閉鎖的だが自由は認められている。この町を仇成さない限りな。」
その話しを聞いたのが、本当に兵を向けて来たその王子が到着する三日前のことだった。