第19章 世界樹の雫
世界樹の雫
それは数多の人々が求めるもの。そんな貴重な世界樹の雫を、マーフィスが採取して来た。無色透明で無味無臭だけど、効能はとても素晴らしいそうだ。
そんな貴重な世界樹の雫を使い、マーフィスは薬を作っていた。どうやら、クエストを受けたらしい。そんな薬が、大量に並んでいる。流石、特級錬金術師である。
「マーフィス、こんなにたくさんの薬をどうするの?」
「ギルドに売るんだよ。」
「全部?」
「ミアも欲しいのなら、好きなだけ持ってってもいいぞ?」
「わ、私はこんな高級ポーションを買うお金なんて持ってないよ。」
「何言ってんだよ。ミアから金なんか取る訳ないだろ。幾つ欲しい?」
不要だとは言えず、一つだけ頂くことにしておいた。受け取らないと、無理矢理たくさんの高級ポーションを渡されそうだったので辞退出来なかった。
その後、マーフィスと向かったギルド。マーフィスが作った高級ポーションを売りに行けば、嬉々として副ギルド長のコーノスが買い取ってくれた。そして、その時に聞いた単価に私は驚きを隠せなかった。
「マーフィスさんの作るポーションは高性能なので、直ぐに売り切れるんですよ。この町には、保養目的の方々がいますからね。当ギルドもお陰で儲けさせて貰っています。」
私はマーフィスが作ったから、最初から高級だとは思っていた。でも、まさかそれがエリクサーだとは思ってもみなかった。だって、初めて目にしたんだもの。
そのエリクサーを私は気軽に貰ってしまった。あんな大金で売れるのに・・・。ギルドを出てから、私はマーフィスに言った。
「ねぇ、マーフィス。さっき貰ったけど、私にエリクサーは勿体ないと思うの。」
「勿体ないとは思わないけど、必要はないとは思ってる。」
「どうして?」
「俺がミアの傍にいるから。だから、もしもみたいなもんだ。多分、そのもしもって事もないとは思うけど。兎に角、遠慮なんかせずに受け取っておけばいいんだよ。」
「う、うん。ありがとう。」
その後、町を散策して訪れたのは保養地。数多の人々が、病気やケガを癒している場所らしい。そんな中、喚き散らす声が聞こえて来た。
恰幅のいい壮年の男が、年若い付き人らしき男を鞭で打っていた。思わず身体が竦み、繋いだマーフィスの手をギュッとしてしまう。
「気分の悪くなる光景だな。何処にでも、こういう輩はいるが・・・。」