第17章 宣戦布告
ディンバー王太子に招かれ、王城でマーフィスと乳繰り合っていた時、ノックと共に部屋に入って来たのはルーヴィン王太子だった。私たちの仲睦まじい触れ合いに、少しムッとした顔をしたルーヴィン王太子だったが、直ぐに人のいい笑顔を浮かべた。
「迎えに来たよ、ミア嬢。」
その言葉にポカンとした私たち。迎えに来たとはどういうこと?私たちの傍まで近付いて来ては、私に向かって伸ばされた手。それを払いのけたのはマーフィスだった。
「俺の嫁のミアに何する。」
「確か、マーフィスと言ったか。キミの嫁である只のミアに用はない。私が迎えに来たのはミア=ローンベルク嬢だ。思い出したくもないだろうが、我が愚弟だった元婚約者。婚約は破棄された。だからこそ、私が代わりに貰い受けようと迎えに来たと言う訳だ。」
「俺とミアは、正式に婚姻を結んでいる。」
「あぁ、勿論知っている。だが、何度も言うがそれは只のミアのことだろう?ミア嬢、キミの家族も心配しているし帰りを待っている。私と共に国に帰ろう。私たちの結婚式は直ぐに執り行われる様に準備している。さぞ、ミア嬢のドレス姿は美しいのだろうな。」
確かに、家を捨てた私は只のミアとしてサインした。それが、こんな風に揚げ足を取られる事になるなんて。
「私はアレとは違って、ミア嬢だけを生涯愛すると誓うよ。少々、お遊びが過ぎた事は、目を瞑るとしよう。今後、私の妻となり王妃として、私と共にその役に尽力してくれればいい。そうだな、子は多い方がいいだろう。」
一人語りを遮ったのは、ディンバー王太子だった。先日とは違って、王族としての身形に驚く私。
「キミがそんな妄想をするなんて、初めて知ったな。」
「私をバカにしているのか?」
「そんなつもりはないが、私の大事な友人の奥方に随分妄想を繰り広げているから本物のルーヴィン王太子か疑うところだった。」
「なっ、き、貴様・・・。嫌、まぁいい。私が求めるミア嬢を止め置いてくれた事で、今の無礼は許そう。」
可哀想な人を見る目をルーヴィン王太子に向けていたディンバー王太子だったが、直ぐに表情を変えて私たちを見た。
「連日、長い時間愛を育んでいただろうに、早い時間に来て貰って悪いね。異国の美味しいお菓子が手に入ったから、二人の祝いとして贈ろうと思って来て貰ったんだ。」