第20章 世界
席を立ち彼女の後について行く。
階段を降り、薄暗い場所を抜ける時
彼女の脚が止まった。
わずかな光源のもとで上を見上げて深呼吸をする様に息を吐く。
“やっと、ここまで辿り着いた”
誰の耳にも届いただろうその言葉を吐き出すと目の前のドアを通った。
入って直ぐは暗い場所だったが彼女が入ると周りに明かりがついていく。
船内はハイテクという言葉がどれ程相応しいかと思うくらいの機械で占められている。
「…こういう機械を揃えても、どうしようもない事もあるんだ。何も出来ない事だって…」
どこまでも悲しげな声は鉄で囲まれたこの部屋にはより冷たく響いて聞こえた。
「本当は理解できてる。
全てが自分の所為では無いと、分かってる。
沖矢さんには一度話したよね
私は“降谷さんと赤井さんに殺された”って。
あの観覧車で。
あれは、 一度じゃ無い。
( トキ )
殺される度、時空を超えた
何度も
何度も
“人を救うのに理由なんか要らない”
そう言ったけど
悔いた事もあった
“普通の人”みたいに。
唯一自分を保てたのは、理由を探して
タイムリープを繰り返して、見て来たから。
私は間違ってなかった。
その理由で合ってたんだって思えたから。
この世界線には彼や、多くの人が必要になる」
彼女が話す言葉に聞き入っていると突然、その場が今以上に明るく照らされた。
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