第19章 “漆黒”
キールだけがその場に残り、盗聴器の類をチェックして、それを終えると僕と彼女に近付いて来た。
「…っ…はぁっ」
「「!」」
彼女が苦しそうに息をし、身体を丸めてふるふると震え出した。
抱えていた身体を木箱に座らせるとその細い腕が僕の胸倉を掴んで
「いったいじゃないっ!まさか全弾撃つなんてッ!」
怒ってきた。なのに、その姿に安心してしまって彼女を強く抱きしめた。
「…船の上でも思ったが、知っていても分かっていても気分の良いものじゃないっ…」
「……ん。よしよし、ありがと。こんな事頼んでも叶えてくれて。」
彼女は優しく抱きしめ返して頭を撫でている。穏やかな声を響かせて。
「…これだけ貴方のお願いを聞いているんだ。僕の要求も叶えて下さい。」
「ん?良いけどまだ要求されてないよね?」
「これから考えます。さて、事情説明を。」
若干怯え始めているキールに手を向けるとハッとした様子でこちらに近付いてきた。
彼女はキールに手の内を隠すつもりはないらしく、全てを話した。
ただ、実験体の様には扱われたく無いから報告をするなら数分先が見える不思議なチカラを持っている人間に遭遇したと伝える様にと話を付け加えた。
キールはそれを了承し、彼女の当初の目論みであるCIAとのコネクション作りも叶えてしまった。
先に出て、周囲警戒をしておくからその後に出るようにとキールに言われ、それに従って僕と彼女も外に出てコナン君達と合流した。
僕は1人で帰る必要がある為、彼女を引き渡すとRX7に乗り込んだ。
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