第17章 齟齬
「…よかった…頼って貰えて」
そのまま頭を大きな手で撫でてくれる。
手から伝わる温度が暖かくて夏はそう遠くないというのに涼しい今日にその温度は丁度良かった。
「…ポアロを出てからのアレは何だったんですか?」
不意に沖矢さんがそんな事を掘り返すから
安室さんと会った時に同じ仕草をしてしまってバレると思った咄嗟の行動だったと言うと困惑した表情になった。
「…てっきり、その姿になった事で試されているんだとばかり。」
そんなに意地悪な事をした覚えは今までない。
確かに実験的なことはしようとしたが結局何らかの形で逆襲に遭っている気分の此方としては貴方の言い分こそ白々しいと思わざるを得ない。
「…お詫びに…今日はこの後トロピカルランドに連れて行って差し上げますよ。」
ーー遊園地なんていつぶりだろうか、そんな事考えた事もなかったーー
思わず顔を上げ沖矢さんの顔を見る。どれだけ嬉しそうな顔をしたのか想像も付かないが私を見るなり沖矢さんも嬉しそうにして居るのが伝わった。
ポーチからシルバーのネックレスを取り出して沖矢さんの指にかけると反対側を持って、手は繋げないけどこれなら辛くないと話した。
しかし沖矢さんは遊園地に着いたら私を抱えたまま歩くと言って聞く耳を持ってくれなかった。
それと、失念していた事がある。
身長制限の所為で楽しみだったジェットコースターには乗れなかったのだ。
けれど中々楽しい時間を過ごした上に、沖矢さんの腕から解放されたタイミングで歩き回る事で充分データも取れ、阿笠邸に戻ったとき哀ちゃんにも喜んでもらえた。
.