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D.World.

第16章 “疎通”






ピタリと止まった沖矢さんの眼鏡は逆光で私の位置からその目は見えない。


「…“実験”とは、何の事でしょうか?」

「…新薬の事よ」

「そう、ですか?てっきり、“ループして私達の動向を見て来たのかと思いました”」

「其れについては、全て見ておいて
ベストな選択を選び続ける必要があるのなら、
当然なんじゃない?」

「…まぁそういう事にしておきましょう。」


何とか落ち着いたその場の空気を感じ取ると、沖矢さんは腕から解放してくれた。






沖矢said


「それで…僕はいつ、シャツの話されたんですかね?」

「…“いつ”と言えばいいのか…」

目を逸らして答えられると更に苛めたくなる。

「言われたんですね…?」

「…と、いうか…頂きましたね」

「ほぉ?…一度も見た事はありませんが…?」

「着たとしても気付かないかも知れないです。」

「なぜですか?」

「加工したので。」

「はい?」

「袖とか、長すぎますし。」

「…」

確かにそうだな。華奢な身体を見ていると彼女が座った状態のまま後ろに下がろうとする。
脹脛に手を添えると彼女はピクッと身体を震わせた。

その瞬間、背後から頭の上に小さな手が振り下ろされる。
全然痛くは無いが良いところを邪魔された。


「そ…そういえばさあ、
ICPOの所有する車って何ー?」

ボウヤが遠くから声をかけた。

「あぁ、その話か。…えっと、各機関と秘密裏に…協力してて。報酬の代わりに…色々と。」

秘密裏に協力?
各機関に、ならICPOだけでは無さそうだな。


「…悪い事はしてないから。」


彼女の頭に手を置き、撫でる。
「疑っていませんよ」柔らかく微笑むと
彼女は笑顔になった。


ーー何日ぶりだったかこの笑顔を見たのはーー


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