第8章 “痕跡”
「降谷さん!」
突然風見の声が耳の奥に届いた。
声がした方に顔を向ける。
「…珍しいですね。」
風見は今、腑抜けていた僕を断罪している。
「…ああ。すまない。」
争う事は逆効果だ自分の非を認めた。
「…何があったんですか。」
その質問には答えられな…ーーー
「……猫を拾ってね。どうしたものかと思っていたんだ。」
「仰って下されば堤無津川の時のように調べましたのに」
「いや、いいんだ。」
彼女は、“常に答えられない問題を抱えている”
“彼女は敵では無いが、味方にもなりきれないと言っている。”
そう考えたのは俺だ
それはつまり
“彼女には敵も居ないが味方も居ない”
彼女は、ずっと
1人だった
GPSが動いた知らせが携帯に入る
「!……風見、今日は帰る。」
「…はい。お任せを。」
動きの止まったGPSの痕跡を追うと
少し離れたビルの屋上で座り込んでいた。
「こんな所にいたんですね。」
追いかけた背中に話しかけた。
「探しましたよ?」
彼女が部屋を開けたまま出て行く事は無いだろう。
「“ピッキング”も出来るんですね。」
「…。」
何で何も言ってくれないんだ?
俺は君を、もっと知りたいのに…ーーー
「おや?また黙ってしまわれましたね。」
「…っ!」
「!」
ーーどうしてそんな、辛そうに涙を含ませた眼をして…ーーー
近付くなという雰囲気を出していて。
携帯を叩き壊して地面を削っている。
ワイヤーを伸ばして彼女は夜の闇に吸われて行くようで
黒い服を着た彼女はすぐに視えなくなった。
彼女がいた場所には
Leave me alone.
(私を1人にして)
と書かれていた。
8章🔚
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