第7章 限界
パソコンに向かい情報を整理しているのか書類を作っているのか分からないが、温かい食事を差し出すと皆受け取ってくれた。
“降谷さんが配っているから”受け取ってくれたんだろうと察しはつく。
変なもの入ってないって保証が欲しいもんな。
鰤の照り焼きは中々好評で、味噌汁は給湯室にお代わりがある事を告げると取りに向かう人も居た。
喜ばれている事を実感すると自然と頬が緩む。
それを見ていたのか降谷さんが話しかけてきた。
「美味い。」
「それはよかった。」
“料理が上手な降谷さん”と知っているだけに、本心から喜び笑顔になってしまう。
だが降谷さんには自分が何者か話していない。
その所為か彼の表情は堅かった。
食事を口に運んだその一瞬以外は。
ーー食べてもらっている間に書くか。ーー
私は降谷さんのデスクにある紙とボールペンを取って聞きたいだろう事を書き始めた。
この字を見せるのはデパートの立て籠りで男性の携帯に挟んだ時の
降谷said
ーー!……やっぱりこの子はあの時Barでいた子に違いない。…ーー
だが、時折雰囲気が違っていたり
僕には会った事がないと言ったり
ドライブに行こうと誘ってきたり
辻褄という歯車の
噛み合わない部分が
見え隠れしているのに
正面のこちら側からは
まるで噛み合っているように見える
一体、どういう…ーーー
書き終わったメモをこちらから読めるように向きを変え
トントンと指を動かして見ろと催促してくる。
視線を動かしてメモを読む。
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私は違う世界から来て
違う時間を行き来している
ここに来た理由が
何処かに存在すると思っている
この世界の未来を知る私は
誰にも、その未来を
教える事は出来ない。
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