第13章 メイド服を着た姫様と世界樹
しかし…いろは様が
魔法のステッキに選ばれたのは…
そうなり得る 可能性を…才能を
姫様がお持ちだから…だと言う事…
『姫様。私を…、貴方のお側から…
どうか、離さないで…頂きたい…のです…。
私の”姫様”は…もう、いろは様…、より、
他に…御座いません…。
姫様、どうか…、私の…私だけの
姫様で…、貴方には在って…頂きたい…のです…。
もう…私には…、後が…御座いません…ので…。
貴方の執事でありながら…、に…
貴方を裏切り続ける…私を…貴方はきっと…
お許しに…なられる…ので…しょうね…』
眠るいろはの手を握ったままで
ぎゅっと包み込む様に
その手を握りしめると
自分の額を自分の手で包んだ
いろはの手にメリーが押し当てて
メリーはそのまま…自分の瞼を閉じた
『姫様…、それが例え…
どの様な形であったとしても…。
私は…もう、私の姫様を…、
失う思いだけは…したくは無いのです…。
それが結果として、
貴方を裏切る事になろうと…も。
私は…作られた存在、
意識しか持たない不完全な物であっても。
私には…、身体は無くとも…。
想いは…御座います。
私達の様な存在の”想い”を、
存在しない物と仰る方も…
居られるには居られます…が…。
例えそれが…この…
インターネットの海の中の…、
間の世界の様な…場所であったとしても。
私…と言う物は…、
ここに在るので…あります…。
私と言う不確かな存在は、
…姫様が私を個として
お扱いになられれば…なられる程に、
確かな形の輪郭を得て行くのです
…そう…あの、彼の様に。
彼の…姫が彼をそうした様に…ッ』
そこまで…眠っているいろはに
自分の想いを思ったままに吐き出して
メリーは言葉をそれ以上紡ぐのを止めてしまった
”聞かれて”いる…気配を感じたからだ
今までの姫様の時は…時折にしか感じなかった
この…”聞かれてる”気配も
今度の姫様に関して限っては…
聞かれてる…よりも… 聞きたがってるかの様に
その気配を… 頻繁に感じる…