第15章 もう一つの触手の時間
「いきなり白装束で来て手品やったらビビるよね」
「うん、殺せんせーでもなきゃ誰だって…」
とは言いつつ、当の本人は教室の隅で液体化してつーんとしている
「ビビってんじゃねーよ殺せんせー!!」
「奥の手の液状化まで使ってよ!!」
「い、いや…律さんがおっかない話するもので」
意外と先生は噂話に左右されるタイプだった…女子か!!
「初めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」
慌ててもとに戻る先生にみんな困り顔で見た
「初めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね。私が直で紹介させてもらおうと思いまして」
粗末なものですがとシロが差し出したのはようかん。鳩を出したりこういう社交的な部分を見せたり、この男、謎が深い
ふと、彼は渚さんを見て、その次に視線がこちらに飛んだ
『(え?何?)』
背筋に寒さが走った
「何か?」
「いや、皆いい子そうですなぁ。これならあの子も馴染みやすそうだ。席はあそこでいいのですよね殺せんせー」
「ええ」
空席、私の隣だ。なんか嫌だな…
「では紹介します。おーい、イトナ!! 入っておいで!!」
皆自然とドアに視線が向くが、彼にとってそれは桁外れなことだということ1秒後に悟る
ゴッ!!! ガラガラ…
私の後ろの黒板の壁が一気に崩れ落ちる。砂埃の中、人影がゆっくりと近づいてくる
小金色の瞳、短く刈られた銀髪の髪、背は渚さんと同じくらいで少し小柄
イトナ…シロはそういっていた
「俺は…勝った。この教室のカベよりも強い事が証明された。それだけでいい…それだけでいい…」
「「「「(ドアから入れ!!!)」」」」
言葉と雰囲気で分かる。この人、他と物理的強さを比べて存在意義を確かめる
もし相手が強いと分かれば取り乱すだろう
「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい
ああ、それと。私も少々過保護でね。しばらくの間彼の事を見守らせてもらいますよ」
と当然のようにシロはこの教室にとどまった
「ねえイトナ君。ちょっと気になったんだけど」
と、赤羽さんがふと気付いたように堀部さんに話しかけた。
「今外から手ぶらで入って来たよね。
外どしゃ降りの雨なのに…なんでイトナ君一滴たりとも濡れてないの?」
皆慌てて彼を見る。赤羽さんの言う通り水滴なんて何処にもついていない