第13章 LとRの時間
「わかったでしょ? サマンサとキャリーのエロトークの中に難しい単語は1コも無いわ」
『…おげぇ』
注意、これは英語の授業である。
注意、これは中学生が受けている。
トーク術の時間、イリーナ先生はサンプルにそういう大人、なビデオドラマを見せる。恋愛をすることで英語力を学べるってそりゃごもっともだけど…
そういうことするからまた勘違いされるんですよイリーナ先生…
「日常会話なんてどこの国でもそんなもんよ。周りに1人はいるでしょう?『マジすげぇ』とか『マジやべぇ』だけで会話を成立させる奴
その『マジで』にあたるのがご存知『really』。ミスター木村、言ってみなさい」
「…リ、リアリー」
「はいダメー、LとRがゴチャゴチャよ」
即没
「LとRは発音の区別つくようになっときなさい。わたしとしては通じはするけど違和感あるわ
言語同士で相性の悪い発音は必ずあるの。韓流スターは『イツマデモ』が『イチュマデモ』になりがちでしょ。日本人のLとRは私にとってそんな感じよ」
イリーナ先生は手をグッと握って笑う。
「相性が悪いものは逃げずに克服する!! これから先発音は常にチェックしてるから。
LとRを間違えたら…公開ディープキスの刑よ」
『遠回しの体罰…』
けどまあ、本当はありがたい。ここまで徹底的に外国にとっての英語を教えてくれるから。
最近驚いたのは英語はあそこでは単なるツールでほとんどが自分の母国語を持っていること、だから別に日本が必死こいて教えている文法は実際使うときは相手も大して気にしてないこと
「だから二ホンが大学の受験をするときにあそこまで書くことにこだわってるのはバカだと私は思ってるわ。
まあ、目上の人相手ならちょっと別だけどね、地位の高い人間こそ、周りと比べてどんな立ち位置にいるのか知りたがるタイプだから。マフィアのボスとか特にそう。
私は侵入する前に必ず敬語のワードをチェックするわ。相手を上げるためにね」
あれはある意味生き残るための知識だ
ただ
「正解しても公開ディープキスされるよね」
すぐ近くでそう話していた渚さんに心の中でうんうんと頷く