第12章 人工知能の時間
二時間目の理科
「では菅谷君、教科書を伏せて。網膜の細胞は細長い方の桿体細胞と、あとひとつ太い方は?」
「え、オレ? やばっ、えーっと…」
今までうとうとしていた菅谷さんは指名されたことに焦り、慌てて答えを探す。
…横で機械音がした気がした…
見ると、固定砲台が質問の答えを表示している。ご丁寧にフォントが点滅していた
「えーと…錐体細胞」
「こら自律思考固定砲台さん!! ズル教えるんじゃありません!!」
「でも先生、皆さんにどんどんサービスをするようにとプログラムを」
「カンニングはサービスじゃない!!」
これでも軍事用学習AIだから言われなくてもどんどん成長していく。人間だったら生徒の鏡なのにね
今日一日、発砲の代わりに砲台には人が絶えなかった
「へえ、こんなのも作れんだ…」
砲台から出されたアームには小さな”ミロのヴィーナス”のレプリカが
「はい、特殊なプラスチックを体内で自在に成形できます。データがあれば、銃以外も何にでも!」
『あのごつい銃、プラスチックだったんですね…』
「おもしろーい!じゃあさえーと…花とか作ってみて」
「わかりました、花のデータを学習しておきます。……王手です千葉君」
「…3局目でもう勝てなくなった、なんつー学習力だ」
『やはり科学の技術って凄い。こんな技術、砲台なんかよりももっと実用的で役に立つものなんて沢山あるのに…
例えば老人ホームに簡易的なものを一台…』
「考え過ぎだよ早稲田さん(汗」
ポンと私の肩を叩いたのは茅野さん
「それにしても思いの他大人気だね」
「うん、自在に変形できるし、一人で複数人と話せるしね」
「…しまった」
私達の様子を見た先生がそう呟いた
「何が?」
「先生とキャラが被る」
「被ってないよ!一ミリも!!」
「皆さん皆さん、先生だって人の顔ぐらい表示できますよ、皮膚の色を変えればこの通り」
「キモイわ!!」
こういう反抗心も何か…ちゃっちい…
「あとさ、このコの呼び方決めない?『自律思考固定砲台』っていくらなんでも」
教卓の上で泣く先生をよそに会話は進行する
「だよね」
「……そうさなぁ。何か1文字とって…」
「自…律…」
「じゃあ律で!!」
「安直〜」
「おまえはそれでいい?」
「…嬉しいです!! では、『律』とお呼び下さい!!」