第10章 特別講習の時間
「そういえば早稲田さんは歌わないんですか?」
『あ、いえ…苦手なので…』
「あれだけ詳しい解説しといてそれはないでしょう。
先生しかいませんから躊躇うこともありませんよ」
『…じゃあ、…一曲だけ』
「そういえば貴方に聞きたいことがあったんですが」
『何ですか?』
「早稲田さん、貴方、Mineさんでしょう。」
『ふ、ふふふ…はは、もう………潮時なんですかね?
はい、そうです。こうやってばれることを何よりも恐れていたんですが』
「ばれる、ということは隠していたんですね。どうして…」
『当たり前じゃないですか。ここは進学校なんですよ?
そんな生徒が、ましてやE組がこんな活動しているなんて聞いたら即退学です。
そしたら…私の居場所は………もうなくなる
元々は、見返すためにやっていたんです。滑稽じゃないですか?私を下に見ている人たちが場所が変われば「すごいね」とか「流石だね」とか言ってるんですよ。うけるじゃないですか…
けど、今はちょっと違う。私はそれが必要だし、ファンの皆も私を必要としてる。もちろん、ぎゃふんと言わせてやるのは変わりません。だからこそ…私はまだ歌わなきゃ』
「そうですか…丁度良かった」
『え』
「実は先日の単独ライブを拝見しましてね、感想が言いたかったのです!!!いやあ、素晴らしかったです!!!」
急に先生が早口になった。私はあまりの変貌、というかギャップにビビった
「もちろん彼女にしか出せない歌い方もそうですが、何よりギャラリーを楽しませる精神が…
『あの…』
はっ…すみません大人げなかったです…」
あれだけオタクっぽく興奮してたのに正気に戻れば後悔するらしい。私に背を向けて、恥ずかしい恥ずかしいと復唱してる
『というか…見てたんですか…何故…』
すると先生はパッと顔をあげて話す
「生徒の活躍を見守るのも先生の役目です。
君は刃を持っている、鋭くてピカピカの。
もちろんのほかの先生や生徒に言うつもりはありません。それは貴方自身で決めてください。
君の刃を磨くことを止める人がいれば容赦しません。ですが、E組にはそんなヤワなメンツはいないはずです」