第46章 卒業の時間
「母さん…父さん……!?」
「数日前、私の元にあの怪物とやらが来てな。よく出来た子だと…見守って欲しいと」
「父さんと母さん、もう一度話し合ったの。やり直そうって。今更なんて言われても仕方ないけど、もう渚が悲しまないように私達も頑張るから」
渚さんのご両親はほぼ離婚状態に近かった。父が家を離れてからお母さんが女手一つで育ててきた。
渚さんは私に言っていた。
勿論母さんが自分を縛ろうとしているのは嫌で仕方がない。
でもそれよりも、元の家族に戻って欲しかった。ただ子供の頃みたいに笑って一緒にご飯を食べたかった
それをただ望んだだけなのに…
渚さんの背中がどんどん小さくなっていく
『(よかったですね、渚さん)』
目を細めて背中を向けようとしたとき、
「遊夢ちゃん!」
気が付かれたようで手首を掴まれてしまった
『あ…』
「来て」
「改めて紹介するよ、遊夢ちゃん。僕のクラスメイトで、
…大事な人」
彼の赤らめた表情で何かを察したのかご両親が口を押さえた
『あ、えと、初めまして。お世話になってます!いや、お母様はお久しぶりになるんですかね…』
「ええ、覚えてるわ。あの時のお嬢さんでしたね」
「広美、この子は…」
「夏休みに渚からうちでお勉強に誘ってね」
「渚から…?」
お二人とも凄く感銘を受けた顔をしていた
「あの渚が…」
「立派になって」
「父さんも母さんも僕をなんだと思ってるんだよ…///」
「渚から話は聞いてるわ。
お辛かったでしょう、女の子としての息苦しさは私も分かるから」
『…はい。せめて、
私の母に卒業のことを…彼のことを教えてあげたかったです』
すると突然お母さんが腰を低くした。何事かを少し身構えると…
”お母さん”の匂いがした
「卒業おめでとう。
貴方はきっと、強くて優しい子になるわ」
頭をポンポンと軽く叩かれると、私の目から涙がぶわっと溢れてくる
「ごめんなさい、こんなことしたらセクハラになっちゃうかしら…」
『ぢ…ちがくて…うぇ…』
「ほら、遊夢ちゃんこっち向いて。拭いてあげる」
子供みたいにわんわん泣き出す私に、彼は優しかった
「……渚も、大人になったんだな」
「ええ」