第46章 卒業の時間
制服に着替え、旧校舎を後にしようとした時、渚さんに呼び止められた
「あの、今言う事じゃないと思うんだけど…謝りたいことがあって」
『謝りたいこと?』
「すごい勝手ながら…遊夢ちゃんの今までのこと、僕から母さんに話しちゃったんだ」
『え?』
「一応付き合ってる身だし、そういうことは共有しておいた方がいいと思って。遊夢ちゃんに直接話してもらうのは何か忍びないしね…」
『そ、そうだったんですか…因みにお母さんは何と?』
「特には何も言っていなかったけど…お付き合いすることに関しては許してくれた
僕、最後の相談で殺せんせーに言われたんだ。『彼女のことを頼みます。少し繊細な心の持ち主だから』って。だから僕が守らなきゃって…」
『……
守られていないと、私は不幸になるんですか?』
「それは…違うけど…」
『守る、だなんて臭いセリフ言わないで下さい。いいじゃないですか。”二人で幸せになる”で』
「…!
うん。……うん!」
そう言って笑いあいながらお互い手を取る。本当、世話好きな先生だったな
「大門寺遊夢」
『はい』
先生は、学校の制度を変えようとか、社会を変えようとかそういうことは一言も言っていなかった。
それに対して怒ったり悲しんだりするのは時間の無駄だと。
それなら、その理不尽をもっと楽しんでやれと。
その方法を幾つも教えてくれた
「…不思議なものだな、今の君の方が輝いて見えるのは。君の活躍をここで待っているよ」
『…!
理事長、終わったら、息子さんのこと褒めてあげて下さい。もしまだ愛しているのなら、もし私みたいになりたくないのなら。
今まで、ありがとうございました』
静かに礼をして段を降りて行った
「終わったー」
「写真撮ろうよ!」
式も無事終了し、ロビーで辺りを見回すとほとんどが家族と再会して門出を祝ってくれてた。
私には…もう親はいない。
勿論祖父母も大事な家族だけど…
せめて笑って迎えてくれる人がここに居たらな…
少し悲しい気分で外へ出ようとすると、
渚さんを見つけた