第45章 自分たちの時間
闘いも終わり、音も静かになった頃、渚さんの腕からだらりと垂れる彼女の腕が、あれは夢ではなかったことが嫌でも分かった
みんな黙って見つめている。
『ホント…バカだよカエデさんは…
本当に償うなら、生きてよ…ずっと一緒にいてよッ』
涙をもう止めることはできなかった
渚さんも私の表情をうかがっている
「とりあえず寝かせよう。俺敷くもの持ってくる!」
「大丈夫です千葉君。あまり雑菌に触れさせたくない」
後ろを見るといつの間にか先生が立っていた。
「みなさん、失った過去は決して戻ることはありません。先生自身も沢山の過ちを犯してきました。
ですが、過去を教訓に繰り返さないことはできます」
そう言って出されたのは…赤い、球体…?
「茅野さんの血液と体細胞です。地面に落ちる前に全て拾っておきました」
「ば、バトル中にそんなこと…」
「今から一つ一つ全ての細胞をつなげます」
より早く、より精密に…
「血液が少し足りませんね、同じ血液型の人ご協力を」
「あと、中村さん、先程のケーキを先生の口に」
「はあ!?
もうぐっちゃぐちゃのドロッドロだけど…」
「エネルギーが必要なんです!戦闘中もずっと食べたかったし!!」
茅野さんの体が少しずつもとに戻っていく。
「ふう、これで心臓が動けば蘇生します…
”校庭で生徒のどてっぱらがぶち抜かれた時”マニュアル通り完璧な筈です」
「「「「ねーよそんな状況!!」」」」
「今だから言えますが、君たちに何かあった時の為に全てを尽くしてきました。同じ過ちを、繰り返さない為に…」
触手で電流を起こす
起きて。
まだ貴方は眠る時間じゃない
「……か、かはっ」
いきなり体を起こした彼女と目が合った。
「また、助けてもらっちゃった…」
「何度だってそうしますよ。お姉さんだってそうした筈です」
『うあああああ!!茅野さんのばかぁ!!!』
もう何度目かわからない涙を流す
「うわ!!顔血でべったりじゃん!?誰の!?」
『君のだよおバカぁ!!!』
「そうなの!?って抱き着くのやめて鼻水ついちゃうから!!」
『…死なないでよ。ずっと一緒に生きてよ』
「あはは…ユーミンも十分重いなぁ」