第45章 自分たちの時間
『わぁ…』
頂上から見える景色に思わず感嘆の声を漏らした。
街の明かりが、蛍みたいにチカチカ点灯してる。人の暮らしが作り上げた自然のイルミネーション。全体の美しさと同時にその一つ一つの灯りの物語を想像すると心が温まる。あのマンションには家族が住んでいて、そろそろキッチンから包丁が板を叩く音と、いい匂いでいっぱいに広がるんだ。
何万ドルの夜景なんて各地に沢山あるけれど、私はこの景色だけでもお腹いっぱいだ。
『(渚さんと…この景色が見れただけで…)』
「遊夢ちゃん」
数分前にも呼ばれた私の名前。けれど、今度は対の席にはいなくて、いつの間にか隣に来ていた
変な沈黙が続く。カラフルな光ではっきりとは分からないけど心なしか瞳に熱を帯びている。この視線には見覚えがあった。
もしかして…なんて思った時すでに遅し
彼の細い指が私の頬を撫でた
『まッ……』
あと数センチというところで咄嗟に口を押える。そのすぐあとやってしまったと悟ったのは言うまでもないが
「…ずっと我慢してたから、そろそろいいかなって思ったけど…
まだ自分が穢れてるって思ってる?
…それともこんな浮気者にキスされるのは嫌?」
『それは……その…』
余りにも的確過ぎだ。言い訳の余地がない
『………
嘘ついたままなのはよろしくないと思いまして…///』
「嘘?」
『…私、もうファーストじゃないんです…』
ああ、言ってしまった…
『実は…カルマさんと一度だけそういう事を…
でも、体の関係とかそういうのではなくて何て言うか……』
「うん。何となく何かあったんだなって思ったけど……」
『…』
「どうしよう。今改めて聞いたら腹立ってきた」
『(わお欲に忠実)』
渚さんは私に手をついたまま項垂れた。
「そもそも他の人といるってだけでいやなのに何でよりによってカルマなの…別に何ともないとか言ってるけど絶対好意あるからあれ。って言っても僕も同じようなことしてるから何も言えないし…ああ~何でずっとあるものだって思い込んでたんだろう。僕のバカバカバカ……」
こうなったらもう話聞かないな、って思ったけど…
駄目だ。後味で笑いが込み上げてくる