第44章 進んでいく時間
数日後、私たちはある森で彼らと落ち合う予定だった。
「あ。見て!」
冬の雲ない青空の中、パラシュートに吊るされた小さな機械がゆっくりと落ちてきた。
機械の施錠を外し、役目を果たした彼らが降りてくる。少しばかり疲れた表情をしていたが怪我はしてなさそうだ。みんな任務成功と二人の無事を祝った
「…なんだこれ…」
「何が書いてあるかさっぱり…」
とはいえ抜き取ったデータは専門用語が多く、中学生が解読するにはほぼ不可能だ。
「任せてください!」
だがE組には奥田さんがいる。ほぼまかせっきりになってしまったがみんなも解読に善処した
「…その、つまり自爆のリスクは先生に入っている触手性質の細胞の大きさに反比例します。つまり、それが大きければ大きい程低下していきます。私の計算ですと、現段階での殺せんせーの自爆リスクは高くとも……」
「「「「1%以下!!?」」」」
「この薬品ってのは作れるのかよ」
「はい、割と簡単です。ていうかむしろ私前にほとんど同じ薬を作った事が...」
「「「「あれかよ!!」」」」
偶然にも調合は以前奥田さんが作った(先生を液体化させる)薬とほぼ一緒のようだ。先生、まさか最初から分かってたとかないよね…?
「じゃあ…暗殺は?」
「…」
磯貝さんの言葉にみんな黙ってしまう。
先生を生かす方法は見つかった。じゃあ…私たちが一学期から続けて、信じ続けてきた暗殺は今日限りで終わりになるのだろうか……
いや。
『……皆さんがどう思っているのかは分かりませんけど…私はどうであれ続けるつもりです。
まだあのタコが慌てふためく姿を見ていたいので』
それはきっと違う。教えてもらった刃は信念をもって返さなきゃならない。
「だってさ。どー?渚」
「……うん。
多分、暗殺は殺せんせーの意義で僕らの居場所だったから。恩師への恩返しはそれが一番いいと思う」
曇りがかったみんなの表情もその言葉で晴れていった。