第43章 ”もういいかい”の時間(重いR)
『精神科の方もあのおかげで大分気分が回復して…2年かけて服用してきた薬からようやく手放せそうです。それで、先生には…』
「遊夢ちゃん。」
振り向くと、少し後ろで彼が足を止めていた
「ごめんね、
君のこと何も知らないのに…僕は自分の気持ちだけ、自分のエゴだけを押し付けてた」
『…』
「怖かった筈だ」
『…まさか。あれはゲームだったんですから。どちらにしろ敵対していたよ』
「けど、
その”内側”はゲームなんかじゃないって分かってたんでしょ?」
『!』
「蔑まれて、孤独になってる自分の気持ちはリセットされないし、拭えない。
僕は君の父親を許せないって思った
そんなこと言える立場なんかじゃないけどね」
同じことしたから。と悲しそうに笑う渚さん
「遊夢ちゃんに一緒に大人になろうって言った時、僕も、僕のやり方でなりたい大人になろうって決めたんだ。
それを遊夢ちゃんが傍で見ててほしい」
『…』
「やっぱり…
自由な遊夢ちゃんが一番綺麗だったみたい」
だめだと思った。あんな熱の籠った、私の心を優しく撫でるような視線で見られたら…
私がとろけてしまう
ああ、私は本当に天邪鬼だ。こういう時だけ逃げる足を使ってしまうのだから
「待って」
『…!』
「また…どこか行っちゃうの?」
『……なんで…』
「何度だって引き留めるよ。君が嘘をつかなくなるまで」
なのに…
貴方が何度も私の手を引っ張ってくれるから…
こんなにも揺らいでしまうんだ
「これ」
『?』
「受け取って?」
私は差し出された紙袋を訳もわからないまま中身を取り出す。ふわふわのクマちゃんが顔を覗かせる。どういうつもりなのか半泣きで顔を上げると…
「茅野と殺せんせーの件で渡すタイミングなくしちゃったけど…
誕生日おめでとう」
『!』
驚いた。彼がプレゼントを用意していたこともだけど…私が彼に誕生日を伝えたのは3年も前だ。
どうして、なんて聞かなくても分かった。彼がそれだけ私を大事に想ってくれたから
「生まれてきてくれて、僕と出会ってくれてありがとう。
なーんて…ベタかな?」
駄目だよ。
”親も言ってくれなかった言葉”を貴方が言うなんて…