第43章 ”もういいかい”の時間(重いR)
『わざわざ付いてきてくれてありがとうございます』
「ううん。遊夢ちゃんが落ち着くって言うなら喜んで行くよ」
ここは裁判所のロビー。あの後烏丸先生が余りにも迅速な対応をしてくれた
「俺は君の家庭からしたら第三者ではあるが、生徒を身体的、精神的障害から守る義務がある。
あの時果たせなかった償いを、今させてくれ」
あの人にもそれなりの信念があったらしい
父は主に脅迫罪と暴行罪に問われることになった。私の体の傷が大きい証拠になったようだ。ただ、民事裁判ということで私もある程度証言が必要になるため今ここにいる
『あの後…』
「ん?」
『全員墓参りをして下さって…
ありがとうございました。きっと母も喜んでいます』
「そっか。それなら幸いだよ。
一度会ってみたかったな、母さんと気が合いそう」
『…』
「…怖い?」
優しく私の手に重ねてくれる。酷く動悸が激しいのに気が付いた
『…今日で終わるんだ。
なのに……変ですよね』
「ううん、そんなことない。前に進むって怖いことでもあるから。
遊夢ちゃんに至ってはその一歩が大きすぎるけどね」
『ふふ…』
「でも、一人じゃない。
みんなで一緒に大人になろう」
『…ありがとう』
「これ、あげるね」
『飴玉?』
「ちょっとしたおまじないだよ。僕の好きな味なんだ。
証拠はもう揃ってるし、烏丸先生もいるから大丈夫だよね」
『うん。帰ったら、みんなに謝らなきゃ…』
「その為にもちゃんと帰ってきてよ?」
『勿論』
「早稲田さん、そろそろ…」
『はい。
行ってきます』
「いってらっしゃい」
後は絡みつく鎖を断つだけだ。
さあ、
終わらせてやる。
口に入れた甘いミルクが私を後押ししてくれた。
裁判は滞りなく進んだ。問題は判決をどうするかだ。
向こう側は懲役7年以下と罰金を提案しているが、
私たちはそれに加えて親権剥奪も要求している。
裁判って有罪か無罪かだけじゃないんだと、その要求の審議を通して思った
「早稲田さん、君はどうして親権をなくしたいと思っているのかな。理由があれば君の口から聞きたいのだが」
裁判官が私に聞いた。父からの視線が痛い
けど、私はもう戻るつもりはない