第43章 ”もういいかい”の時間(重いR)
渚side
殺せんせーから変な連絡がきた。
ー明日急遽課外授業にします。特に持ち物は必要ないので送った指定場所に時間までに集合して下さいー
今の時期に遠足?とみんな不審に思っていたが何か考えがあると直接先生に聞いた人はいなかった
寒い朝、厚着をしたみんなが集合し始める。何故か烏丸先生とビッチ先生も呼び出されたらしい
「寒っ」
「ていうかさ、どこに集合するのかと思いきや…」
「墓地だよね?ここ…」
干からびた雑草たちがカサカサと体を揺らす。朝だから、不気味というわけではないが近くには何もなくて車通る音が妙に響く閑散とした場所だった
「お待たせしました」
とようやく主催者が到着した。片手?には何か長いものがくるまれている
「殺せんせー、ミイラでも取ってきたの?」
「し、失礼ですよ!!」
そう言って布を剥がすと眠っている遊夢ちゃんが出てきた。何故か寝間着姿で目元には隈ができていた。
「昨晩の夜中、一人で学校に来たんです」
「!」
確か遊夢ちゃんは電車通学だった筈だ。そこまでの距離をしかも歩いて夜中、学校に行こうとは誰も思わない
「何か確信があったんでしょう。そして来るなり先生にこう言いました。
”大人になりたくない”と」
その言葉に一体どんな意味が含まれているのか、探ろうにも探れなくてみんな言葉に困る
「心配しなくても彼女の口から聞けますよ」
「どういう…」
『ン…』
ちょうど遊夢ちゃんが目覚めた。昨日はまともに寝られなかったらしいから先生の厚意で起きるまで待っててくれたみたい
『先生。って寒っ…』
「早稲田さん、昨日話しましたね。
世の中を、自分を捨てる前に、
中身を捨ててしまってもいいんじゃないかと」
『……
そっか。そうだよね。
だってここは…』
((パシャ…
桶と杓子を借りてきた遊夢ちゃんは手慣れた手つきでお墓の水を変える。一通り終わった後に静かにお墓に語り掛ける
『お母さん。
ごめんね、今日はお花もお線香もお菓子も持ってきてないけど…
でもね、今日は先生と友達連れてきたの。
ふふ。黄色くて変でしょ?でもいい人なんだよ』
遊夢ちゃんの母親は、亡くなっていた。