第42章 決断の時間

渚さんを倒す方法はなくても…弱らせる方法はあった
―――

「仮にひつじちゃんのとこに渚君が来たら他の男子の名前を出すのが一番効果的だと思う」

『？なんで』

「今渚君ヤンデレ期だから。意中が他に向いてるってわかるとそれなりに動揺してる」

『え、それ私の命の保証は？試合の後に狙われる可能性だってあるんだけど』

「ないよそんなもん」
『うわ最低』

「けどそれ以外にひつじちゃんが対抗できる術はないでしょ。死ぬならできるだけ長く生きててよ」

『はぁ…貴方私の事好きなのか嫌いなのかどっちなんですか』
―――


膝と肘のサポーターを外す。

「！」

『堀部さんからの特注品二号です』

関節ナイフ
ナイフを振れない私に作ってくれた唯一の物理攻撃の武器だった。手で持てないなら、身に纏えばいいと。

攻撃力は劣るけど確実にＥ組相手の不覚はとれる



『発案者は意外にも寺坂さんです。

彼らもまた、

優しい』

「ッ…」


早い段階で渚さんが来た。持っていたナイフを肘で受け止める

「さっきも言ったよね？僕だけ見ててよ」
こんなに迫ってくる（精神的にも物理的にも）彼は初めてなんじゃないだろうか

『断固拒否！』
「くっ…」

無防備だった腹を蹴り、距離を取らせる。下から銃を構えるが予測があったのか早撃ちはできなかった

ここは開けすぎてる…おまけにトラップもこの陣営には欠けられなかった。できれば引き付けて不利にさせたい


『そんなに取られたくないんですね。私の事』
「分かってるなら言わないでよ」

なら少しずつ心境を揺さぶってのめり込むように操作するだけだ






ワイヤー陣に着いた。私が一段飛び越えると渚さんが足を止める。恐らく、チャンスは一回だけ。決める。

彼はナイフを構えワイヤーを切ってくる





『（床下三センチ。最も人が足をぶつける高さ）』

そこなら、少しかがまなきゃナイフは届かない

渚さんの体がぐるんと前傾姿勢に回る



今だ！！







3発の銃声が鳴り響いた










『……な…！』


「捕まえた」




撃った弾は全部木材で防がれた。いつの間に…そんなものを…！？

「驚きはしたけどちゃんと対策はしてあるよ。

転がった反動で的は小さくなるから撃たれる場所はある程度予測できる。ペイントだから貫通しないしね」