第42章 決断の時間
中村さんと寺坂さん達がゆっくりと旗へ近づく。
が、
彼らの頭上に影が映る
『!』
((ザッッ!!
『ぎっ』
自分の体を確認して間一髪避けられたことを確かめた。
やられた
目の前で四人も…
殺して、起き上がった影がようやくこちらを向いた
「あははっ…
今のは絶対避けられないと思ったんだけどなぁ…
流石だね。遊夢ちゃん」
渚さん…
背中に寒気が走る
何、これ…
憎悪、慈愛、嫉妬、歓喜、殺気、幸福
それぞれ相反する感情がドロドロに交わったこの雰囲気。
考えが…読めない…
『渚さんこそ…
今まで一度も手を下さずに息を潜めていたなんて…
それに…あの殺すタイミング…
完璧でした』
「ありがと」
にっこりと笑う顔の形はいつもと同じだ。でもそれに似合わないオーラを持ってるから根拠ないんだよな…
「僕はさ」
『?』
「考えてみれば、あえて遊夢ちゃんを生かしていたのかもしれない」
『……
煽ってる…つもりですか。だとしたら結果的にこちらに良い立ち回りになったから意味ないです』
「違うよ。ただの素直な感想。
だって…方法なら幾らでもあった筈なのに…こっちが不利になる立ち回りをするなんて逆に変でしょ?
ずっと違和感があった。
けど今なら分かるんだ」
そう言って静かにナイフを私に向けた
「他じゃ嫌だったんだって…」
『?』
「他でもない、
僕が君を殺りたい」
洒落にならない恐怖に包まれる。急にとんでもないことを言い出した
「勿論ちゃんと命を奪う戦いじゃないから言ってる。
それなら…
その時だけ僕だけを…見てくれるでしょ?」
何という暴論。呆れかえって寧ろ嘲笑した。
本当に…この人相手に勝てる気はしないけど…
『それが本当だとしたら…最低なリーダーですね』
「我ながらそう思う」
「ひつじちゃん」
『迎撃します。3分くらいなら…時間、稼げるので…隙があったら構わず殺して。
それが過ぎたら……
私のサポートは今後ないと思っていて下さい』
「……
了解」
最後のメッセージを残し、通信手段を切る。
私はただ、殺す気でこれをやるだけだ