第41章 憎悪の時間
口から出てきたのはガラス越しにあったあのストラップ。何かのマスコットなのか知らないが、特にこれといった特徴もない普遍的な顔をしたエイだった。
「いいじゃん。じゃあそれがデートの報酬ってことで」
その場しのぎのあまりいいとは言えない買い物だったが、とりあえずお礼は言っておく
『ありがと。後で鞄か携帯にでも付けとく』
「ん、楽しみにしてる」
今度は、
壊されないようにしなきゃね…
『……冷た』
「文句言わないでよ」
『誰がこんな真冬にこたつもなくアイスなんて食べたいんですか』
その後立ち続けて疲れたのでとりあえず座る確保して、赤羽さんがクレーンゲームでとってきてくれたアイスを嗜んでいた。最近の物って何でもあるんだね…
『(本当だったら…渚さんとこういうことをする未来もあったのかな…)』
「似てるね」
『え』
「髪が長かった頃のひつじちゃんに」
いまいちピンと来ない
「何か何もかもに敵意って言うか…不快感?持ってる感じ。他人行儀なのはあるけど、近寄りがたい雰囲気があの頃にそっくり。
俺は嫌いだったね」
ああ、つまり退化してると言いたいのか。そんな風に見えてたんだ…
自覚はなかったけど、この憎悪の気持ちはかつて自分が持っていたのかもしれない。今日で溢れたんだ。三年間拗らせたこの気持ちが
『触手の後遺症なんですかね…何もかもが黒く見えるんです』
「!」
ほんの気まぐれだった。解決なんて微塵も期待してなかったが、何となく、話したくなったのだ
『心臓の中が何かで淀めいて…他者の視線に敏感になってる…
感情の理性が利かない。子供に戻ったみたいに、器はすぐにいっぱいになって溢れてくる。
腹はずっと熱くて、煮えたぎってる。
茅野さんは…これをずっと飼っていたんですね…凄いです』
「…」
『おかしいんだ。
みんな好きなはずなのに…口から出てくるのは、憎しみの言葉ばっかり…
私は嘘つきだ。
苦しい…苦しいよ…
心の中に怒りがあるのに、その反面寂しいんだ…
冷たくて、孤独で…
なんで、なんでこうなっちゃったかな…
誰か…助けてよ…』
押し殺していた、私の声。