第41章 憎悪の時間
「ひつじちゃんってさ、好きな人いないの」
『ここに来てどういうつもりなんですか
……もう分かりませんよ、何が好きっていう感情なのか。考えたくもない』
「じゃあ言い方を変える。セッ…」
『それ以上言うと割り箸口に突っ込みますよ』
あくまでもここは公の場だ。限度ってのは弁えてほしい
「渚君のこと、まだ好きだったりする?」
『…もうできるだけその話はしたくない。そもそもさっきまであんな半ば脅しみたいな迫り方してきた癖に…』
「ごめんごめん。
あそこまで酷く言わないと動かないと思って」
『……貴方は…私のことが好きなんですか?』
「………
ちゃんと言ったら、
信じてくれるの?」
『……
ないですね。貴方は結構な虚言癖があるので。どこまで信じたらいいのか分からない』
「やっぱり?」
赤羽さんは苦笑いをして冷水を飲んだ
『あのお店を出たのはいい物の…他に行く当てがあるんですか?
そもそもデートってどこに行って何するのか分からないし…』
「好きな人がいればどこ行ったっていいの。あ、」
彼の眼が向いたのはゲームセンターだった。まだ薄暗い時間でもキンキンに派手で明るい
「あそこ行こ」
『ええ……この時間帯は不良がいそう…』
「うん、皮肉のつもりなのかな」
「うわっ。今の妨害絶対ひつじちゃんでしょ」
『フフフ』
なんて文句は言いつつも店内のレーシングゲームでブイブイいわせてた
『これでもゲームの腕はこっそり上げているのだ!実況者をなめるな』
「腹立つー」
不良ってこういうことするんだ…(違います)決めつけるのはよくないけど、私の暮らしよりは大分楽だな
『わあ…巨大ぬいぐるみがいっぱい…あのガラスケースの中に入ってたい…』
「ねえ、クレーンゲームの中身だけ見てて楽しいの?」
『ウインドウショッピングと同じですよ。第一取れないですし、練習の為に200円も使いたくありません』
「倹約。
じゃあ、俺が取ってあげようか?」
『え、できるの?』
「まあね、ここは俺の溜まり場の一つだから。何がいいの」
そういって勝手に2コインを入れていく赤羽さん
『あああ、ちょっと』
まだこっちの決済(?)完了してないのに…
「ほら早く」
『ええと、そ、そこのエイのストラップ!』
「りょーかい」