第41章 憎悪の時間
私が教室に戻った後、先生は例の真実を教えてくれた
「先生はね、教師をするのがこのE組が初めてです。
にも関わらず、すべての教科を君たちに滞りなく教えることが出来ました。何故だと思いますか?」
それが…あぐり先生だったのか…
「先生はかつて”死神”と呼ばれる殺し屋でした。
それからもう一つ、放っておいても来年の三月には先生は死にます。
一人で死ぬか、地球ごと死ぬか
暗殺によって変わるのはそれだけです」
先生は過去のことをゆっくり、抜かりなく話してくれた。
殺し屋だった先生のこと、
あぐり先生と会った先生のこと、
”怪物”と化してしまった先生のこと、
そして、先生にとっての人生の失敗、
それでもあった楽しかった時間
『(ああ、やっぱり、先生はシロに…)』
そう思っても今は自責の念しか出てこない。
『(ここにいたんですね、あぐり先生。
どうか安らかに眠って下さい)』
今はただ、
あぐり先生の成仏を祈ることしかできなかった
「調子はどう?茅…雪村さん」
「茅野でいいよ。茅野カエデも悪くないし」
私たちは茅野さんのお見舞いに来ていた。意外と回復の兆しが良く、予定よりも早く目覚めたらしい。しかし、冬休み中は丸々入院。三学期に滑り込みセーフらしい
『今度は、逆になってしまいましたね』
「あはは…(汗
いや、その……ごめんね、ユーミンを騙すような真似して。触手ももうないし、結局、お姉ちゃんを殺したのは殺せんせーじゃないってわかったから。もう大丈夫」
『何となくですけど…演技の中に、この生活を楽しんでいる自分もいたんじゃないですか?
似た者同士、拒絶するのはわかりますけど…それは紛れもない貴方のお姉さんの言葉です。
一つだけ聞かせて下さい。
私をユーミンと呼んでいる貴方は…本当の自分なんですか?』
「………
うん。
そうだよ」
その言葉が、表情が、作り物ではない。そう思えたのは、傍にお姉さんの気配がしたからなんだろうか……
それだけ告げるとまた来ると言って病室を出た。何が本当の自分だ、無理をしているのは…私の方なのに…
でも、正しかった。あの場は彼女を労わる場所だから。私の不安はあそこでは場違いなのだ。