第40章 復讐の時間
「昨日の演劇発表会楽しかったよね」
「杉野は熱演だったなー」
「あんな邪悪な顔ができるとはねー」
「う…
でもあんなゲスい顔を神崎さんに向けたと思うと……」
「そんなことないよ。意外な顔が見れて私は楽しかったよ」
「マジで野球やめて役者の道進もうかな!?」
「チョロ過ぎだろお前」
翌日も昨日のイベントでの話で盛り上がっている。自分の生徒の意外な才能は嬉しい物だと、先生も太鼓判の評価をした
「渚ー!ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「何?」
「さっきちょっと体育館の倉庫で小道具だったビーズぶちまけちゃってさ、全部拾うには大変で」
「おや、なら先生も手伝いましょう。人手が多ければ早く終わりますし」
「ありがとう殺せんせー!助かるよ!」
茅野さんだ。
演劇の準備の期間も特に怪しい動きや表情はなかった。以前あんな怖い表情を向けられてしまったからか、あれはもはや私が見た夢なんじゃないかとすら思ってしまう。いけないと思いつつもつかの間の安堵の時間を得ていた
「どうしたのひつじちゃん」
『いえ、いつもの茅野さんだって』
「
え、いつものってどういう意味?」
『え』
しまったと口を押えた瞬間
大きな音と共に校舎が揺れた。
何事だと皆外へ急いで出る
そこには、ボロボロになった先生と…
「茅野、さん…?」
「何、……その触手」
髪を下ろし、恐らく私と同じうなじからうごめくソレを従える…
彼女だった
こんな時に頭がいいなんて皮肉だ。彼女に起きたこと、彼女がしたかったこと、を瞬時に悟ってしまったから
心臓の音が速くなる
「あーあ、渾身の一撃だったのに…逃がすなんて甘すぎだよね、私」
「茅野さん、君は一体…」
「ごめんね、茅野カエデは本名じゃないの。
雪村あぐりの妹
そういったら分かるでしょ?”人殺し”」
彼女はやっぱり、雪村あかりに戻ってしまった。
これからもずっと、なんて虫が良すぎる願いだったんだ
「しくじっちゃったのは仕方ない。切り替えなきゃ。明日またやるよ、殺せんせー。
場所は直前に連絡する。
触手を合わせて確信したよ。
必ずやれる。今の私なら」